① 宅食が必要そう…でも、母は乗り気じゃない
私の母は、料理が大好きな人です。🍀
近くのスーパーまで買い物に出かけて、お気に入りの食材を見て選ぶのが、毎日の楽しみでした。
そんな母も年齢とともに足を悪くし、10年前には両足に人工股関節を入れる手術を受けました。
同じころ、手根管症候群の手術も受け、握力は10キロ以下に。
この頃から「食材の宅配もアリかな」と考え始めましたが…
母には強いこだわりがあって、「やっぱり自分の目で見て選びたい」と、どうしても受け入れてもらえませんでした。
母はシルバーカーを押して、がんばって買い物に出かけていましたが、どうしても時間がかかってしまいます。
午前中に出かけても、お昼までに帰ってこられないこともしばしば。
早くお昼を食べたい父と、何度も衝突するようになってしまいました。
その後も、腰痛や膝の痛みが加わり、台所に立つことも難しくなっていきました。
私は遠方に住んでおり、毎日手助けすることはできません。
いつの間にか、家族の中で“食”が少しずつストレスの原因に。
宅食を取り寄せることも考えましたが、
「料理が好きな母に宅食なんて…」という気持ちが拭いきれず、なかなか踏み出せませんでした。
思い切って母に提案してみたものの、「自分で作りたい」と断られてしまい…。
最終的に、父が母の代わりに買い物へ行くようになったのです。
② 買い物をめぐる、父と母のすれ違い
父は定年まで、仕事一筋。
それまで家事をする機会はほとんどなく、食材の買い物も、まったくの初心者でした。
スーパーではどこに何があるか分からず、値段の相場も知らない。
初めての買い物では、
- 驚くほど高級なものを選んでくる
- 数個でよい物を大量に買ってくる
- 母が頼んだ品を「売ってなかった」と手ぶらで帰ってくる
そんなことが続きました。
店員さんに聞けばすぐに分かるのに、それも恥ずかしくてできなかったようです。
「そんなわけないでしょ」と、母が呆れることもしばしば。
気づけば、買い物はふたりにとってストレスの種に。
👴父にしてみれば、母のために頑張っているのに、毎回叱られてばかりで面白くない。
👵母にしてみれば、頼んだものが揃わず、「だったら自分で行った方が早い」と思ってしまう。
ある日ついに、父が「もう買い物には行かない!」と怒り出してしまいました。💦
そして、母も「やっぱり私が行く」と無理をして外出するように…。💦
でも、足腰の状態が良くないので、外出にも時間がかかります。
ゆっくり準備して出かけ、途中で休みながら買い物をして帰宅すると、すでに昼の時間。
そこからご飯を作り始めるので、どうしてもお昼が遅れてしまいます。
決まった時間に昼食をとりたい父と、思うように動けない母。
ここでもまた、すれ違いが起こるようになってしまいました。
③ すすめても断られる宅配サービス…どうしたら?
無理に改善策をすすめると、両親との関係がギクシャクしてしまいました。
母は食材宅配について「自分の目で見て選びたい」と言い、
宅配弁当も「まだそこまでじゃない」と、取り合ってもらえません。
父が買い物に行かなくなってからは、母が一人で半日かけて買い物に行く日々。
でも、二人分の食材となるとかなりの量です。
シルバーカーには、そんなにたくさん載せられません。
そして、気づいた時には──
母が買ってくるものが「軽くて日持ちするもの」に偏るようになっていました。
- パン
- インスタントやレトルト食品
- ヨーグルト
- バナナ
- お惣菜
- 野菜はレタスやトマトなど、カット不要なもの
…どれも、すぐに食卓に出せる簡単なものばかり。
あんなに料理好きで、献立にこだわっていた母だったのに。
よく考えると、握力の低下で包丁を使うのがつらくなっていて、
時間のかかる調理はもうできなくなっていたのです。
でも母には、
💬「まだ料理したい」
💬「やっぱり買い物に行きたい」
そんな強い気持ちがありました。
スーパーで安い食材を見つけて献立を考えたり、
知人に会ってちょっとおしゃべりしたり、
ついでに自分のおやつを選んだり。
母にとって買い物は“食材の確保”を超えた娯楽だったのかもしれません。
そんな母の思いを、どう受け止めればいいのか――
私は悩みました。
④ 解決の糸口は「昼だけ宅食」だった
そんな時に思いついたのが、「昼だけ宅食」というアイデアでした。
お昼ごはんだけ宅食にして、朝と夜は今まで通り。
母の買い物も、無理なく続けることができます。
新しいことに慎重だった両親も、
「お昼だけなら…」と、ようやく首を縦に振ってくれました。
──本音を言えば、私は両親に1日3食しっかりとした食事をとってほしかったのです。
できれば夕食も宅食に…と心のどこかで思っていました。
でも、焦らず、まずは両親の気持ちに寄り添うことにしました。
実際に始めてみると、「昼だけ宅食」は、我が家にはぴったりの選択でした。
- 昼ご飯分の買い物が不要になり、買い物の量が減ったことで、母の身体がラクになった
- 母の帰りが遅くなっても、お昼にはお弁当が届くので、父もイライラせずに食べられるように
- 夕食は手作りを続けられるので、母の「料理の楽しみ」も失われなかった
そして何よりも大きかったのは、
両親が「宅食を経験できた」ことです。
💬「思っていたより美味しいね」
💬「食事に悩まなくて済むから助かる」
💬「今後、もし体がしんどくなったら、夕食も宅食にすればいいね」
──そんな言葉を聞くことができました。
「今までの暮らしを大きく変えずに」宅食を試す。
それが、両親の心のハードルを下げてくれたのです。
「昼だけ宅食」という選択が、
これから先も両親が安心して暮らすためのひとつのきっかけになったと、私は感じています。
⑤ “もしもの備え”として冷凍弁当もプラス
わが家では、天候や体調が悪いときの“もしも”に備えて、
冷凍タイプの宅食も常備するようになりました。
母の足の調子が悪い日、外が雨や雪の日、
あるいは「今日はちょっと作りたくないな…」という日にも、
冷凍弁当があることで、気持ちがぐっとラクになります。
冷凍庫に少しスペースがあって、冷凍食品に抵抗がなければ、
こうした「冷凍宅食」を試してみるのも便利だと思います。
ちなみに、我が家では「ワタミの宅食ダイレクト」の冷凍弁当を購入しています。
「ワタミの宅食ダイレクト」
⑥ まとめ|宅食は、親の自由を奪うものじゃなかった
・「昼だけ宅食」を取り入れたことで、昼食分の買い物が不要になり、母の身体的な負担が軽くなりました。
・また、父も昼食を待つストレスから解放され、夫婦の衝突が減りました。
・夕食は手作りを続けられるため、母の「料理の楽しみ」もそのまま。
・実際に体験してみることで「思ったより美味しい」「助かる」と感じてもらえ、将来的に夕食も宅食にする可能性に対する心のハードルも下がりました。
料理が好きな親こそ、“宅食の力”を借りて、もっと豊かに暮らせるのかもしれません。
我が家にとって宅食は、「ラクをするためのもの」ではなく、
“自由を守る手段”だったのです。
宅食は、親のペースやこだわりを大切にしながら、無理なく取り入れることが大切。
我が家の体験が、同じように悩まれている方のヒントになればうれしいです✨